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日本の自然 富士山
第6巻「水の旅」より

参考資料
諏訪彰 編
「富士山 その自然のすべて」同文書院

立体図は国土地理院50mメッシュ数値地図を使用。

富士山の水系

湧水と湖 主な湧水と湖

富士山は雨が多い地域であり、一年間の降水量は22億トンといわれます。特に中腹以上の降水量は年間3000ミリに達すると考えられています。しかし富士山には目立った川は無く、大量の雨や雪解けの水は、山体に浸み込み、長い時間をかけて麓の各地に湧水となって流れ出しています。


ツララ 山頂直下のツララ

富士山上部に浸み込んだ水は、谷や崖などの地層が現れている場所で湧き出します。このような標高の高い場所で湧き出した水は、すぐに再び浸み込んで、地下を流れてゆきます。


標高2,000mの湧き水 標高2,000mの湧き水

中腹の森の中には、このような小さな湧水がいくつかありますが、湧水量はわずかです。


御殿場市の湧水群 御殿場市〜小山町の湧水

東麓では標高500mあたりを中心に数多くの湧水が見られます。御殿場市北部から小山町一帯の湧水は酒匂川から相模湾へ、御殿場市南部の湧水は黄瀬川から駿河湾へと流れ出しています。この湧水は一年中水温が変わらないため、冬の間の水田を利用した水菜作りや、ワサビの栽培などに利用されています。


忍野盆地 北麓の忍野盆地

富士山北側の富士五湖水系に、一年間に降る雨は8億トン以上といわれます。そのうち44パーセントは、地表の植物などから蒸発してゆきます。地下に浸み込んだ水は、溶岩のすき間や砂礫層を通って、水を通さない古富士の地層を流れ下り、湖の底などから湧き出します。化石湖となった忍野盆地に湧き出している忍野八海は、その様な湧水のひとつです。


湧池 湧池

忍野八海の湧池は、1日あたり23万トンの水が湧き出しています。水温は11.5度から13.5度。湧き出した水は、山中湖から流れ出す水と合流し、桂川となって山麓から流出してゆきます。


異常増水 富士五湖の異常増水

山中湖を除く各湖は流出する河川を持ちません。1991年8月から9月にかけてたてつづけに台風が接近し、大量の雨をもたらした結果、湖の水位は急激に上昇し、西湖では基準水位を9メートル近くも上まわる、異常増水になりました。湖畔の道路は冠水し、12月下旬まで通行できませんでした。他の湖でも同様に異常増水に見舞われました。


地下水の流れ 地下水の流れ

かつては一つの湖だった西湖、精進湖、本栖湖の湖面水位は900メートルと現在もおなじ高さを示しています。これは湖を分断した溶岩のすき間を水が移動しているためと考えられています。流出する河川が無いこれらの湖の水は水位が900メートルを超えると西麓の朝霧高原の地下を通って駿河湾側に流出していきます。


溶岩 精進湖に流れ込んだ溶岩

湖に流れ込んだ溶岩を見ると、岩はすき間だらけです。このようなすき間を通して、地下で水が移動するとともに、大量の地下水を貯えています。富士五湖の容積は約6億トン、そしてその数倍の量の地下水が北麓の地下に蓄えられているといわれます。


白糸の滝 白糸の滝

白糸の滝では、高さ20〜25m、幅約200mの崖の途中から、1日に10万トン以上の水が、流れ出しています。水温は15度。溶岩は古期火山活動の終り頃に流出したもので、地下水は溶岩層の間や岩の割れ目、そして水を通さない古富士泥流層の上を流れ下り、断層で地層が現れたこの場所から湧き出しています。
(参考・水量豊かな昭和初期の白糸の滝全景・撮影/佐藤忠義)


湧玉池 湧玉池の湧水部

富士宮浅間大社境内の湧玉池は、西麓最大の湧水量を誇ります。富士宮溶岩と呼ばれる溶岩の層は幾重にも重なって、厚さ30メートルにもなり、その下に古富士火山の泥流層があります。その中を流れて来た水が、溶岩の途切れたこの場所で湧き出しています。かつては1日あたり40万トンもの水が湧き出していましたが、近年では1日20万トンに減少しています。これは下流域の市街地を中心に、1日70万トン以上の地下水を汲み上げる様になったことで、地下水圧が減少したためと考えられています。


小浜池 小浜池

三島市の楽寿園にある小浜池は、三島溶岩流の末端の一部に位置しています。かつては1日20万トンもの湧水量があり、三島湧水群の代表的な湧水として、知られていました。しかし、現在は水位が下がって、全く水がなくなってしまうことが多くなりました。これは、地下水系上流域での工場などによる地下水の汲みあげが、原因とされています。


柿田川 柿田川

富士山全体の地下水の量は、1日あたり約460万トンといわれます。その量の約2割にもあたる、1日80万トンから120万トンという豊かな水が湧き出しているのが柿田川です。上流部には大小数十箇所にも及ぶ、湧水部があり、水温は年間を通して15度。湧水部の地下30メートルから40ートルあたりには、三島溶岩流の末端にあたる、厚さ10メートル以上の溶岩層があります。溶岩流の中や、その下に閉じ込められていた地下水は、ここで一気に開放され、湧き出しているのです。


柿田川 水に溶け込んでいる鉱物を調べると、水は富士山の中腹以上の高い場所から浸み込んで、数十年の時を経て、湧き出していることが解ってきました。黄瀬川が流れる三島溶岩流の地下には、1日あたり140万トンという膨大な量の地下水が流れているのです。
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